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昆虫採集と思い出 ヒメギフチョウのこと [昆虫採集]

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<写真出典=「学研の観察図鑑1 昆虫1・チョウ」発行人:鈴木泰二/編集人:本間三郎/発行所:株式会社学習研究社/1984年発行>


ヒメギフチョウのこと


テレビやラジオ、新聞などでヒメギフチョウの話が出てくると、私はそちらの方へ耳を傾ける、
そして何十年か昔のことを思い出す。

私はその頃、高校の生物部に籍を置いていて、8人くらいの仲間と活動をしていた。
対象は「モリアオガエルの研究」と「ヒメギフチョウの研究」の2大テーマだった。

ヒメギフチョウは写真に見るように黒と黄色のまだらに裾の所に赤いスポットが特徴だった。
近くの山間にヒメギフチョウが食べるカンアオイという植物が群生していたので、そこで見ることができた。

私は卵から成虫になるまでを観察するために、葉っぱに卵が産み付けられているカンアオイを根から採集して持ち帰り、家で10㎝ほどの植木鉢に植え替えた。カンアオイには2つの卵が付いていた。

カンアオイに水をやりながら、毎日毎日、観察日記を書いた。変化のないときは「変化なし」と。
そして、いつしか黒い2ミリ位の幼虫がふ化したことを知った。

私はふ化したことに感動して見守った。それから鉢全体を網で囲った飼育箱を作り毎日毎日克明に観察日記を書いていった。飼育箱は底面が縦横30cmmの正方形で高さ50cmほどあった。そこにナイロンの網を張った簡単なものだった。

幼虫は5mm,1cm,2cm,3cmと次第に大きくなっていった。カンアオイの葉がなくなれば、また採集してきて鉢に植えた。かくして幼虫はサナギになった。そして冬を越した。

春になって、サナギのしっぽが動いているのを発見した。もうじき蝶になるのだと思いワクワクした。ある日、学校から帰ってくるとヒメギフチョウがばたばたと、狭い飼育箱の中で飛んでいた。私は羽のどこも損なわれていない、きれいなヒメギフチョウを目の当たりに見ることができた。うれしかった。

成虫になった蝶は翌日カンアオイの群生している山間へ離しに行った。
かごから出してやると、元気よく飛んですぐ見えなくなった。

私は当時のことを克明に観察日記に書いた。しかし、もう一匹の同じ頃サナギになったほうは、何の変化もなかったので不思議に思っていた。サナギの中は、まだコロイド状なのかもしれない。

一つ残ったサナギはいつまでも変化なかった。「もしかして、死んでしまったのでは?」と疑いを持つようになった。数日後、動かないサナギをくまなく見ていると、ぽつんと1mmくらいの穴が開いているのを発見した。

「誰もこんな所に針を刺した覚えはないのに」と見ていると、なんと中からハエが出てくるではないか!
ショウジョウバエより、もう少し小さなハエ。
私は愕然とした。

自然界では何でも起きるのだなと思った。
春になって美しいヒメギフチョウが羽化するのを待っていたのに。
ハエか!きっと、ヒメギフチョウが幼虫の時、ハエは卵を幼虫の体の中に産み付けたのだろう。そうして、幼虫がサナギになってコロイド状になったときハエは卵からかえり、サナギの中でそれを食べ、ハエが大きくなったときサナギに穴を開けて出てきたのだろう。
ハエも生きる権利はあるだろうが、これでは泥棒だ。


自然界では力だけが生きる正義なのだということを知った。
もしかしたら生まれ出て日の目を見ない方がずっと多いのではないか。
人間界でも力の強さが正義として歴史をつくってきている。
生物が生きることは本当に厳しいとつくづく思ったものだった。





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